概要
アケコン(PXN-0082。以下PXN)を使い始め、スティックがカチカチうるさいのが気になりだし、対策してみた。
最終的には3Dプリンタでスティックパーツを自作して組み込んだので、その経緯を紹介する。
作成したモデルデータは以下で公開している。
取り付け方法はこちら
調査
で、静音化について調べたところ、三和電子とqanbaが既製品で静音のスティックを販売しているようである。
三和電子は基本スイッチをomronの静音タイプのものを使用して実現している(GRV02という製品)。このスイッチに入れ替えれば静音化できるが、スイッチそのものが割高。
(1個1000円。普通のタクタイルスイッチだと200円くらい。その差は5倍!!)
NOTEqanbaではメカニカルキーボードで使われるcherry mxをそのままスイッチとして使用しているらしい。
スイッチ自体は安いはずなのに三和電子よりも全体の値段が高いのは、海外製品で円安が影響しているからだろうか?
qanbaは調べるとCherryMX軸をスイッチとして使っているモデルがあるとのこと。

キースイッチなら以前に自作キーボードを作ったときの余りがあるので、これを真似て自作すればいけると思い、まずはその手の3Dモデルが配布されているかを探してみた。
cherry軸を使うスティックのモデルがあったので、これを採用することに。
既存モデルの印刷、試用
とりあえず単純にそのモデルを使ってみることに。
組み立てにはM8の80mmねじやナット、M4の30mmねじなどが必要で、ホームセンターで買いそろえた。
なおバネは売ってなかったので、とりあえず組み立てて良さげならあとから通販で買えばいいと考えていた。

組み立てた第一印象としては、どうしてこの形でスティックが中央に戻るの?という感想であった。
いろいろ確認していくと、皿のようなパーツとねじ下部のパーツでバネを挟み込み、倒した方向の内と外の距離の差が、バネの戻る力となり、スティックが中央に戻る、という理屈なのだと理解した。
もっともその距離の差はバネ自体が傾くこともあって肉眼ではあまり違いを感じられないレベルなので、素人にとってみれば不思議で仕方なかった。
そしてPXNにつけようとした際、スイッチ部分の高さがでかすぎて収まらないことが判明。作る前にサイズ確認しとけ!
モデルの修正
幸いにも使っているモデルはライセンス的に加工OKとのことなので、PXNに収まるように改修することにした。
構造の簡略化
ピボットと呼ばれるスティックの軸受けの機構が高さの元凶なので、これをスイッチ取り付け部分となるべく統合させた。
また、手元にあるキースイッチが黒軸と、ロープロファイルのkailhの赤軸しかなかった。モデル的に黒軸しか使えないのだが、黒軸の反発力ならバネいらないんじゃない?と思い、バネの機構を無くすことも考慮して、機構の高さをオミットした。
バネパーツの自作
バネは使わないとは言え、一応使えるようにもしたいと考えていた。
高さを抑えた影響で、本来想定されているバネでは長すぎてしまう。
1cmほどかつ12mmほどの直径のバネ、というのがなかなか見つからない
とりあえずアリエクで3cmのバネを注文し、そいつを短くして取り付けられればいいと考えていた。
だが商品が届くのを待っている間にふと思いついてしまった。バネの代わりになるもの、ゴムみたいな素材を使えばいいんじゃね?と。
そして、その素材となるものをすでに自分は手に入れていた。
TPUフィラメントである。
これでバネっぽいパーツをモデリングし、自作することにした。

造形は洗濯機のくみ上げポンプのホースや蛇腹から着想。
実際にスティックに組み込んだ感じでは、ほどよく中心に戻ってくれるのでこれで決定。
キースイッチ取付口の縮小
自作キーボードを作成した際に、CherryMXスイッチをはめ込む形で実装していた。
今回のモデルでははめ込むと割とガバガバだったので、きっちりはめ込められるよう修正。
これは一応、キーの交換を可能にするという要件を満たすための対応となる。
ボルトの3Dモデル作成
ちょうどいい長さのM8ネジが売ってなかったので、自前でモデリング。
それに合わせてナットパーツも自作した。
4方向ガイドパーツの作成
三和電子のスティックだと、パーツの取り付け方を変えることで、スティックの動きの制限を変えられる仕組みがある。
そこまで高度なものは作れないが、後付のパーツをモデリングした。
配線にあたっての調査
基盤とスイッチの配線を見ると、各スイッチに信号線とGNDの2つが配線されている。信号線はともかく、GNDは共通でつなげられるんじゃと思った。

基板のパターンを見た感じ、普通にGNDは全部同一ラインにつながっていた。
なのでワニ口クリップを駆使してスイッチのGND側の線を別のスイッチのGNDにつないで入力されるかを確認することにした。
試したところ問題なく動いたので、基板からのGNDの接続端子は一つだけ使い、あとは各スイッチにGNDが共通でつなげられるよう、スイッチ側に配線することにした。
これで実装する端子を8個から5個に減らすことができた。端子が減ること自体より、ケース内の線の体積を少なくできることが重要。
自作モデル印刷、組み立て
材料
- plaフィラメント
- tpuフィラメント
- m4 10mm x4
- m3 20mm x4
- gateron 黒軸 x4
- ホットスワップ端子 x4
- ファストン端子 オスメス5組
端子圧着、ホットスワップへのはんだ付け
ホットスワップへ線をはんだ付け。補強を兼ねて熱収縮チューブもつけた。



ファストン端子(オス)を圧着。

まずはこんな感じのパーツを4つ作成。

GNDの線をはんだ付け。
各キースイッチの片側を数珠つなぎのように配線した。
本体側配線の改造

スティック部分を外し、基本スイッチから配線を分離する。
スイッチの端子の被覆をずらすと線が直接はんだ付けされているので、コテで外す。

そして線の方にファストン端子のメスを圧着する。これで今回のスティックと、もともとのスティックとをいつでも付け替えることができるようになる。
信号線の4つとGND1つ、計5つの端子をつけた。

なお基本スイッチは1つは完全に分離されたが、他3つはGNDがつなげたままにした。
とりあえずパームレストの空間にマステで固めておいた。

一応基板側と端子側の導通チェック。
問題なさそうなため、本体側の改造は完了。
本体への取り付け
各モデルパーツを本体に組み付ける。
-
pxn_adaptorを本体にM4ネジで止める。お椀型になっている方がケース内側に向く方向で設置。
-
pivotリングを入れる
-
baseの方にキースイッチをはめ込み、tpu_springも入れておく

-
baseをadaptorに重ねる

-
(オプション)4方向に制限したい場合、4guideも重ねる

-
角の穴にM3ネジで固定

-
M8ボルトを使い、ベースとなったモデルのボール、シャフトカバー、スティックワッシャーを通す

-
本体上側から突き刺し、ケース側からspringcapでネジ締めする


これで、スティックパーツ自体の取り付けは完了。続いて配線に移る。
本体への配線


4方向ガイドをつけると若干線が苦しいが、何とかはめられた。
と、ここでファストン端子部分の絶縁を考えていなかったことに気づく。
とりあえず即席でマスキングテープを巻いて対処。

ま、中身なんて普段見ないし別にいいやろ
完成
配線を適当にまとめ、カバーをネジ止めして完成。

実際に倒してみて、4方向にしか倒れず中央にちゃんと戻ってくれた。



実際に使用してみて
音は静かになった。フィーリング面はバネパーツがまだ柔らかいかな?という印象。パーツ単体時と実際に本体に組み付けた状態とでは、力の入り方が変わるからだろうか?
まあそこは調整できるので、今後対応する。
感想、今後の展望
クリアランス面で割と試作品をなんども印刷しなおし、完成までに結局1カ月ほどかかった。
隣人を気にせず使用できるモノにはなったので、今後これで色々ゲームを遊んでみようと思う。
既存のモデルを改造したり、そのモデルに合わせて自作のパーツを作成したりと、モデリング面の勉強になったことと、限られたスペース内に配線や、絶縁のことをちゃんと考えないと見てくれがあかんことになるというのを痛感した。
配線の取りまとめは見た目だけでなく保守性にも影響するので、今後意識していきたい。
TIPおまけ : TPUの印刷について
Bambu Lab A1だと、AMS LiteでTPUは使用できなかった。
マニュアルにも使用できないよとは書いてあったが、ダメ元で実際に試したところ、AMS内の送り出しが途中で止まってしまった。フィラメントが柔らかすぎて機構とかみ合わないっぽい。
しょうがないので素直に外部スプールに付け替えて印刷した。
これからAMS LiteでTPU印刷しようとする人は、(改造でもしない限り)できないのであきらめよう!